日本の永住権を取得する3つの条件と申請をスムーズに進める方法

永住権は、日本での生活を安定させ、キャリアの幅を広げる選択肢です。入管での審査が厳しく、要件を満たしていることを客観的に証明できるかどうかが重要です。
本記事では、永住権取得の3つの基本要件と不許可リスクを回避するためのポイントを、行政書士の視点から解説します。最後まで読むことで、あなたが永住権の申請要件を満たしているかを確認し、申請に向けた準備を進められるでしょう。
永住権の3つの基本要件と証明方法
日本の永住権を取得するための要件は、「素行要件」「独立生計能力」「国益適合要件」の3つがあります。提出書類でそれぞれの要件を満たすことを証明し、出入国在留管理庁の審査官に納得してもらう必要があります。ここでは、各要件の詳細と証明方法について詳しく解説します。
素行要件|素行がよいこと
簡単に言えば「善良な市民であること」、つまり日本の法令を守り、義務を果たしていることです。主な提出書類は以下のとおりです。
- 国民年金保険料や国民健康保険料の納付状況を証明する書類
- 住民税や所得税の納税証明書
- 身元保証書
過去の犯罪歴はもちろん、出入国や在留に関する違反、交通違反、納税状況、社会保険料の納付状況も審査の対象となります。以下のような場合は、永住権の審査が不許可となる可能性があるため注意が必要です。
- 国民年金保険料や国民健康保険料、社会保険料を滞納したことがある
- 住民税や所得税などの税金を滞納したことがある
- 軽微な交通違反(駐車違反、スピード違反など)を繰り返している
- 過去に在留期間を一日でも超過して不法残留したことがある(オーバーステイ)
- 資格外活動許可の範囲を超えてアルバイトをしたことがある
過去に軽微な交通違反や、税金・社会保険料の納付遅延や滞納があった場合でも、絶対に永住権が取得できないわけではありません。重要なのは、申請時点で問題が解消されていることと、問題が解消されてから十分な期間が経過していることです。
たとえば、滞納分を納付した後は期限内納付を続ける、直近の一定期間(一般的に過去1年程度)は交通違反がない状態を保つなど、ルールを守る姿勢を示しましょう。
ただし、不法残留や重大な犯罪歴など、入管法上非常に重い違反がある場合は、永住許可を得ることは極めて困難です。上記の不許可となる可能性がある例にあてはまる場合は、自己判断せず行政書士などの専門家に相談しましょう。
独立生計能力|安定した生活を送る経済力があること
永住を希望する人とその家族に、安定した生活を送るための経済的な基盤があることです。日本からの公的な支援を受けずに自力で生活できることが求められます。主な提出書類は以下のとおりです。
- 所得課税証明書(直近5年間)
- 預貯金残高証明書
- 在職証明書
- 給与明細書 など
審査で重視されるポイントは、収入の安定性です。原則として、直近5年間の年収が単身で年収300万円以上など、生活保護の基準額を大きく上回っていることが目安となります。ただし、扶養する家族が多い場合は、より高額な収入が必要です。
預貯金や不動産などの資産がある場合は有利になりますが、保有資産や一時的な高収入よりも、安定した収入を得られていることが重視されます。正社員など安定した雇用形態であることや、自営業の場合は事業の継続性があることを示しましょう。
以下のケースにあてはまる場合は、独立生計能力を満たさないと判断されることがあります。
- 世帯年収が目安の金額に満たない
- 転職を繰り返している
- 正社員ではなく不安定な雇用形態が続いている
- 消費者金融からの多額の借入がある
- 奨学金、クレジットカードのキャッシングなどの返済に遅延や滞納がある
収入や資産状況に懸念がある場合は、行政書士に相談し、より有利な書類の構成や説明方法を検討することが、許可への近道です。
国益適合要件|永住が日本の利益となること
申請者の永住を許可することが、日本の社会にとって有益な存在であるかどうかを総合的に判断する要件です。日本での長期的な生活態度と、日本社会への貢献意欲・適応能力を審査されます。特に重要な項目は以下のとおりです。
- 原則として、引き続き10年以上日本に在留していること
- 就労資格または居住資格をもって5年以上在留していること
- 現在の在留資格で最長の在留期間(3年または5年)をもって在留していること
- 直近2年間の公的年金、医療保険、税金などを確実に納付していること
逆に、以下のようなケースでは不許可のリスクが高まります。
- 現在もっている在留資格の期間が1年や2年である
- 直近2年間で、公的年金、医療保険、税金などの納付に滞納や不履行がある
在留期間中に3ヵ月以上の長期の出国があった(在留の継続が途切れたと判断される場合、申請資格自体がなくなります)
申請前に在留期間などの要件を満たすことを確認し、申請のタイミングや提出する補足資料を検討することが大切です。
永住権申請の特例
在留期間が10年に満たなくても永住権の申請ができる特例措置があります。日本との関係が深い人や、日本にとって特に有益な人材であると認められる人が対象です。
ただし、要件が緩和されるのは「国益適合要件」の在留期間のみで、「素行要件」や「独立生計能力要件」は通常どおり厳しく審査されます。特例の対象となるのは以下のようなケースがあります。
日本人・永住者・特別永住者の配偶者や子
日本人、永住者、または特別永住者の配偶者や子どもは、在留期間の要件が大幅に短縮されます。緩和された条件は以下のとおりです。
- 配偶者:婚姻後3年が経過し、かつ日本に引き続き1年以上在留していること
- 子ども:引き続き1年以上日本に在留していること
配偶者の場合、「永住者や日本人の配偶者等」の在留資格が与えられた後も、婚姻の実態が伴っているかどうかが厳しく審査されます。単に書類上の夫婦であるだけでなく、同居の事実や生計維持の状況などから、真実の婚姻関係であるかどうかが確認されます。
また、「独立生計能力」や「素行要件」の審査では、本人だけでなく日本人や永住者の配偶者の状況も審査の対象です。申請者本人が要件を満たしていても、世帯主である配偶者が納税などの義務を怠っている場合は不許可となるリスクがあります。
定住者の在留資格をもって5年以上日本に住んでいる人
「定住者」の在留資格は、日系人やその配偶者、難民に近い状況にある人など、法務大臣が特別な理由を考慮し、相当の期間を定めて居住を認めた人に対して与えられるものです。定住者の在留資格をもって引き続き5年以上日本に在留している人は、永住権を申請できます。
5年以上の期間には、留学、技能実習、就労ビザなど定住者以外の在留資格で在留していた期間は含まれない点に注意が必要です。
定住者の在留資格は、必ずしも高度な専門性に基づいているわけではありません。そのため、独立生計能力の審査では、直近5年間を通じて、安定した収入と納税・社会保険料の適切な納付実績があることが、より一層重要視されます。
難民認定を受けてから5年以上日本に住んでいる人
出入国在留管理庁から難民認定を受けている人は、国際的な人権保護の観点から、日本での生活基盤を安定させる必要性が高いと見なされています。難民認定後、引き続き5年以上日本に在留している人は永住権申請が可能です。
難民認定を受けている場合でも、将来にわたり日本社会の一員としてふさわしいかという観点で審査されるため、素行要件と独立生計能力要件の証明は必須です。
過去の迫害の事実とは切り離し、難民認定後の生活において、日本のルールを守り、公的な負担を適切に果たしている実績が求められます。
日本への貢献を認められた人
日本の社会や経済、文化などに特別な貢献をしていると認められる外国人は、在留期間の要件が10年から5年に短縮されます。
申請時点で、すでに5年以上の継続的に在留しており、現在または過去の在留期間中に日本の国益に資する特筆すべき貢献が客観的に認められることが必要です。
具体的な貢献分野としては、外交、経済、医療、教育、スポーツ、芸術など、幅広い分野が評価の対象となります。
貢献の内容が、経済活動のみならず、ボランティア活動、地域の活性化、文化交流の推進など、社会全体にプラスの影響を与えているかどうかが評価のポイントです。
国や自治体、公的機関からの感謝状、表彰状、報道記録、専門家による推薦状など、審査官にあなたの貢献を伝える客観的な資料が必須となります。また、貢献者としてふさわしい人物であるか、公的義務の履行は一層厳しくチェックされます。
高度人材として日本に滞在している人
高度な専門的な知識や技術を持つ外国人の受け入れを促進するため、「高度専門職」の在留資格をもつ人は、永住権申請で優遇されます。高度人材のポイント制に基づいて評価される実績に応じて、永住権取得までの在留期間が以下のとおり大幅に短縮される点が特徴です。
- 70点以上を3年間継続している実績:引き続き3年以上日本に在留していること
- 80点以上を1年間継続している実績:引き続き1年以上日本に在留していること
高度専門職は以下の3つの活動区分に分かれており、それぞれに加点項目が設定されています。学歴、職歴、年収、研究実績などの項目を合計し、合計点が70点以上になると「高度人材」の在留資格を申請できます。
| 区分 | 評価項目 | 主な加点対象 |
| I. 高度学術研究活動 | 学歴、職歴、研究実績など | 博士号、修士号、専門職歴、研究実績、特許など |
| II. 高度専門・技術活動 | 学歴、職歴、年収、資格など | 博士号、修士号、実務経験年数、年収額、特定の資格など |
| III. 高度経営・管理活動 | 職歴、年収、会社規模など | 経営・管理経験年数、年収額、会社の売上高など |
ポイントは、申請時点で70点または80点に達しているだけでなく、過去にその水準を継続的に満たしていたことを証明する必要があることです。ポイントの計算基準や必要書類は複雑なため、現在の状況で何点になるのか、いつ申請可能になるのかについては、専門の行政書士に確認するとよいでしょう。
永住権審査で不許可リスクを回避するポイント
永住権の審査は、他の在留資格の更新や変更審査と比較しても格段に厳しく、不許可となった場合の再申請には、原則として不許可から6ヵ月以上経過している必要があります。最初の申請で確実に許可を得るために、準備することが大切です。以下では、不許可となるリスクを回避する具体的なポイントを解説します。
世帯単位で収入が足りているか確認する
独立生計能力を判断する際、申請者本人だけでなく、世帯の収入が確認されます。申請者とその家族全員が、日本で安定して生活できる経済力があるかどうかを総合的に判断するためです。
一般的に、単身であれば年収300万円程度、扶養家族が1人増えるごとにプラス70万円~80万円程度の年収が、直近5年間(特例該当者は特例に定められた期間)継続していることが望ましいとされています。申請者本人の収入だけでは目安に満たない場合でも、配偶者の収入を合算して基準を満たすことができれば問題ありません。この場合、配偶者の所得証明書なども提出が必要です。
以下のようなケースでは、補足説明の資料を用意することで不許可のリスクを低減できます。
病気、育児、転職活動などで年収が目安を下回った年がある場合
年収が下がった理由を具体的に説明する理由書を提出しましょう。病気であれば診断書、育児であれば育児休業期間の証明など、収入が下がった期間が限定的であり、現在は回復していることを示す客観的な資料を添付するとよいでしょう。
契約社員、派遣社員、または個人事業主(フリーランス)の場合
年収は目安を満たしていても、雇用形態や事業継続性が不安定とみなされる可能性があります。正社員でない場合は、直近の雇用契約書を添付し、契約の更新実績や、会社からの継続勤務を期待する旨の推薦状などを提出して安定性を補強しましょう。
個人事業主の場合は、事業計画書、取引先との長期契約書、開業届など、事業の継続性を証明する資料を詳細に提出する必要があります。
海外の家族を多数、税法上の扶養家族として申告している場合
審査官から「本当に経済的な援助が必要な家族なのか」という疑念をもたれることがあります。家族へ実際に送金している記録(銀行の送金証明など)を提出し、扶養の実態を証明しましょう。
不自然に扶養人数が多い場合は、審査に時間がかかったり、追加資料を求められたりする可能性が高まります。
税金や保険料の滞納がないか確認する
税金(所得税、住民税など)や国民年金保険料、国民健康保険料などの納付状況は、「素行要件」と「国益適合要件」の重要な判断材料です。公的な義務を果たしていない場合は「日本のルールを守れない」と判断されて不許可になるリスクが極めて高くなります。
少なくとも直近2年間はすべての税金や保険料について滞納がないことが必須です。申請者本人だけでなく、配偶者など納税義務がある家族全員の納付状況も確認されます。
過去に税金や保険料の納付遅延や滞納があった場合でも、永住権の取得が不可能となるわけではありません。重要なのは、申請時点までにすべての滞納を解消し、そのあと一定期間、期限内納付を続けている実績を示すことです。
また、納付が遅れた理由や経緯について、詳細な理由書を作成し、真摯な反省と改善の姿勢を示しましょう。
行政書士に相談する
永住権の申請は、準備する書類が多く、準備に時間と労力がかかるうえ、審査基準が複雑なため専門的な知識が必要です。以下のような状況にある方は、行政書士に相談することで不許可リスクを抑え、申請をスムーズに進められるでしょう。
- 特例に該当するかどうかの判断が難しい
- 過去に税金や保険料の納付遅延、軽微な交通違反などの履歴がある
- 収入の安定性に不安がある
- 多忙で書類の収集や作成に時間を割けない
取次申請を認められた行政書士は、書類作成から出入国在留管理局への書類提出まで一連の手続きを代行できます。手続きに不安がある場合は、無理に自力で申請しようとせず、専門の行政書士に相談することをおすすめします。
永住権を申請する方法
永住権の申請はどこでどのようにおこなうのか、手続きの概要を確認しましょう。
手続きの流れ
永住権申請は、一般的に以下のような流れでおこないます。不明点や懸念点がある場合は、早い段階で行政書士へ相談するのがポイントです。
- 永住権の基本要件や特例要件を満たしているか確認する
- 必要に応じて行政書士に相談する
- 必要書類を収集・作成する
- 居住地を管轄する地方出入国在留管理局へ書類を提出する
- 地方出入国在留管理局で審査をおこなう
- 審査の結果がハガキで通知される
- 許可された場合、地方出入国在留管理局で手数料を納付し、在留カードを受けとる
万が一不許可となった場合、速やかに不許可の理由の説明を受けに行き、再申請が可能かどうかを検討します。原則、6ヵ月間は再申請ができないため、初回の申請で許可を得られるよう丁寧に準備することが大切です。
申請先
永住権の申請先は、居住地(住民票のある市区町村)を管轄する地方出入国在留管理局、またはその支局や出張所です。
申請は、原則として申請者本人が出入国在留管理局に出頭して行います。例外として、法定代理人や申請取次が認められた行政書士などが、申請者に代わって申請書類を提出することも可能です。
平日の日中に時間をとるのが難しい方や、書類に不安がある方は、申請取次が可能な行政書士への依頼を検討するとよいでしょう。
申請先の場所や受付時間は、出入国在留管理庁のWebサイトで確認できます。申請先によっては窓口の事前予約を受け付けているため、事前に確認し、混雑を避けて申請すると効率的です。
申請にかかる費用と時間
永住権の申請には、許可がおりてから支払う審査手数料のほか、申請に必要な納税証明書などを取得する手数料がかかります。行政書士に手続きを依頼する場合は、別途報酬が発生します。報酬は依頼する事務所や手続きの内容によって異なるので、依頼前に見積もりをとると安心です。
- 審査手数料(許可がおりたら支払う):8,000円
- 証明書類取得費用:1通あたり数百円〜数千円
- 行政書士報酬(手続きの代行を依頼する場合):10〜30万円程度が相場
審査にかかる期間は、標準処理期間が4ヵ月とされていますが、申請内容や時期、提出書類の状況により前後します。実際には、申請してから半年〜1年程度かかることも珍しくありません。
審査期間中は、追加資料の提出を求められたり、面接を求められたりすることがあります。この期間、在留資格の有効期限が迫っている場合は、別途在留期間更新許可申請が必要です。
永住権取得が日本での生活にもたらすメリット
一生涯日本で暮らしたいと考えている外国人にとって、永住権は外国人が日本での安定した暮らしをえるための重要な選択肢です。以下では永住権の取得がもたらす具体的なメリットを解説します。
在留期間が無期限になり、更新手続きが不要に
永住権を取得すると、在留期間が無期限になります。永住権以外の在留資格は最長でも5年の期限があり、定期的に更新手続きが必要です。更新のたびに、書類準備の負担や、「更新が不許可になるかもしれない」という不安が伴います。
永住権を取得すると、煩わしい更新手続きが不要になり、長期的な暮らしや仕事の計画を立てやすくなります。ただし、再入国許可を得ずに1年以上日本国外へ出国すると永住権が失効するため、必要な手続きは確実に把握しておきましょう。
就労や活動内容が制限されず、キャリアアップが自由
永住権を取得すると、原則として就労や活動内容に関する制限がなくなります。ほかの在留資格は活動範囲が限定されているため、転職や副業をする際も、新たに始める活動が現在の在留資格の範囲内であるかの確認が必要です。場合によっては在留資格変更許可申請をおこないます。
永住権を取得することで、会社員から独立して起業したり、異なる業種の仕事に転職したりすることに制限がなくなります。自分のスキルや市場のニーズに合わせたキャリアアップがしやすくなるのは大きなメリットです。
社会的信用度が向上し、生活基盤が安定する
永住権を取得すると社会的信用度が飛躍的に向上し、住宅ローンや車のローン、事業資金の融資などの金融審査に通りやすくなります。マイホームの購入など、日本での長期的な資産形成が可能になり、家族のライフプランも安定するでしょう。
また、日本での信用が高まることで、賃貸契約やその他の手続きにおいて、保証人を見つけやすくなるなどのメリットもあります。
配偶者・子の在留資格も安定する
永住者の配偶者には「永住者の配偶者等」という、活動に制限のない在留資格が与えられます。永住者の配偶者や子どもは通常の在留資格よりも審査が緩和されるケースが多いです。
家族全員が安定した在留資格をもつことで、安心して日本での生活を送れるでしょう。
まとめ
永住権の取得は、日本での生活に大きなメリットをもたらしますが、審査は厳格です。「素行要件」「独立生計能力」「国益適合要件」という3つの基本要件をクリアし、書類上で客観的に証明することが求められます。
スムーズに審査を進めるには、要件を満たしているか、どのような書類で証明するのかを事前に確認することが重要です。慣れない手続きで不安がある場合や、書類の準備や提出に時間が割けない場合は、取次申請ができる行政書士に相談しましょう。
ai行政書士法人では、永住権申請についてのご相談を受け付けています。あなたの状況を丁寧にヒアリングし、書類作成から提出まで手続きを代行できます。初回相談は無料です。まずはお気軽にご相談ください。
