【2026年閣議決定】スクラップヤードが許可制に|廃棄物処理法改正案の内容と事業者が準備すべきことを解説

2026年4月10日、政府は廃棄物処理法等の改正案を閣議決定しました。今回の改正案の最大のポイントは、金属くずや廃プラスチックを保管・再生する「スクラップヤード」事業に許可制を導入することです。これまで法規制の対象外だったスクラップの保管が、全国一律で都道府県知事等の許可を必要とする事業になります。
背景には、スクラップヤードの周辺で火災や悪臭、水質汚濁といったトラブルが各地で多発している状況があります。一部の自治体は独自に条例で規制を設けてきましたが、条例のない地域に移転して事業を続ける業者が後を絶たず、全国統一のルールが求められていました。
改正案は今国会に提出され、成立すればスクラップヤード規制は公布から2年6ヶ月以内に施行される見込みです。本記事では、改正案の具体的な内容から、事業者が今から準備すべきことまで、わかりやすく解説します。
廃棄物処理法改正案の全体像
今回の改正案は、「スクラップヤードの規制強化」と「災害廃棄物の処理推進」という2つのテーマで構成されています。ここでは改正案の全体像と、法改正に至った背景を確認します。
改正案の2本柱と今後のスケジュール
改正案の第一の柱は、スクラップヤードの規制強化です。使用済みの金属・プラスチック物品の保管や再生を行う事業に許可制を導入し、環境省が定める基準の遵守を義務付けます。また、環境汚染のおそれがある物品の国内再生を原則とし、輸出には環境大臣の確認を必要とします。
第二の柱は、災害廃棄物の処理推進です。令和6年の能登半島地震などの教訓を踏まえ、市町村における災害廃棄物処理計画の策定や、平時からの備えを強化する内容が盛り込まれています。
施行時期は、スクラップヤード規制が公布から2年6ヶ月以内、災害廃棄物関連が公布から3ヶ月以内とされています。法案が今国会で成立した場合、スクラップヤードの許可制は早ければ2028年後半〜2029年前半に施行される見通しです。
なぜ今、全国一律の規制が必要になったのか
スクラップヤードは、廃車のパーツや廃電池から取り出した金属、廃プラスチックなどを保管・選別・再生する事業場であり、資源循環の面で重要な役割を担っています。しかし、一部のヤードにおける不適切な管理が全国各地で問題化してきました。
千葉県の調査によれば、2018年1月から2022年3月までの間に県内のスクラップヤードで27件の火災が発生しており、ヤードの約3割で近隣住民とのトラブルが報告されています。騒音、悪臭、汚水の流出、崩落の危険性など、周辺住民の生活環境に深刻な影響を及ぼすケースが相次いでいました。
こうした状況に対し、千葉県や埼玉県などの自治体が独自の条例で対応してきましたが、条例がない地域に移って事業を続ける業者が存在し、いわゆる「条例逃れ」が問題となっていました。全国一律の法規制による対応が長年求められていた中、ようやく今回の法改正に至った形です。
現行制度の問題点
改正案の意義を正しく理解するために、これまでの制度がどのような状態だったのかを整理しておきます。
スクラップの保管は法規制の対象外だった
現行の廃棄物処理法では、「資源としての価値がある」スクラップは原則として規制の対象外でした。廃棄物処理法が規制するのは「不要物」としての廃棄物であり、有価物であるスクラップの保管は法律上の規制が及ばない空白地帯にあったのです。一部の使用済み家電は家電リサイクル法等の対象ですが、金属くずやプラスチック全般については包括的な規制が存在しませんでした。
この「有価物は廃棄物ではない」という法的整理が、ヤード事業への参入障壁を極めて低くしてきた一因であり、不適切な管理を行う事業者が増加する背景となっていました。
火災・悪臭・水質汚濁が各地で多発
法規制の空白により、基準を設けずにスクラップを大量に野積みする事業者が全国各地に広がりました。金属スクラップの中にはバッテリーや油脂類が含まれるものがあり、不適切な保管は火災の原因となります。また、雨水によって汚染物質が流出し、周辺の河川や土壌を汚染するケースや、腐食した有機物による悪臭が周辺住民の生活環境を損なうケースも多数報告されています。
こうしたトラブルが発生しても、法的な規制根拠がないために行政が効果的な指導・是正を行うことが難しい状況が続いてきました。
自治体条例による規制とその限界
全国に先駆けて対策を講じたのが、ヤードの集中する千葉県と周辺自治体です。千葉市は全国初の許可制条例を令和4年に施行し、千葉県も令和6年4月に「金属スクラップヤード等規制条例」を施行しました。その後、埼玉県・福島県(令和7年1月施行)、茨城県、さいたま市などにも規制条例が広がっています。
しかし、条例はその自治体の管轄区域内でしか効力を持ちません。条例が施行された自治体から、規制のない隣接地域へ移転して事業を継続する業者が現れるなど、自治体ごとの対応には構造的な限界がありました。全国一律の法規制の必要性が、現場レベルからも強く訴えられていた状況です。
スクラップヤード規制の具体的な内容
ここからは、改正案に盛り込まれたスクラップヤード規制の4つのポイントを順に解説します。
都道府県知事等の許可制の導入
改正案の最大の柱が、スクラップヤード事業への許可制の導入です。使用済みの金属やプラスチック物品を大量に保管または再生する事業を行うには、都道府県知事等の許可を取得することが必要になります。
現行法では事実上の自由参入だったヤード事業に対して、許可制というハードルが設けられることで、事業者の適格性が事前に審査される仕組みが整います。無許可での営業には罰則が科されるため、法令遵守の意識が低い事業者の排除につながることが期待されます。
保管・再生に関する基準の遵守義務
許可を取得するだけでなく、保管や再生に関して環境省が定める基準を遵守することが義務付けられます。報道や環境省の資料によれば、具体的な基準としては、スクラップの積み上げ高さの上限、管理品目の掲示、火災防止対策、汚水防止対策などが想定されています。
これらの基準の詳細は今後の政省令で定められますが、千葉県等の先行条例の基準が参考になると考えられます。千葉県の条例では、保管高さ制限、散水設備の設置、消火器の設置、搬入・搬出記録の作成などが義務付けられています。
輸出規制の強化
環境汚染のおそれがある物品については、国内での再生を原則とし、輸出する場合には環境大臣の確認が必要となります。この規定には、不適正なヤードから金属資源が適切な処理を経ずに海外に流出することを防ぎ、国内での資源循環を促進する狙いがあります。
海外への輸出を前提としたビジネスモデルを構築している事業者にとっては、事業スキームの見直しが必要になる可能性があるため、早い段階での確認と対応が求められます。
立入検査・事業停止命令・罰則
改正案では、行政による立入検査の権限が明確に規定されます。周辺の環境汚染や健康被害のおそれがある場合には、改善命令や事業停止命令を出すことができるほか、無許可営業や基準違反に対しては罰金が科されます。
これにより、これまで法的根拠がないために対応が困難だった行政の介入が可能になり、近隣住民の安全と生活環境の保全が図られることになります。
災害廃棄物の処理推進に関する改正
改正案にはスクラップヤード規制と並んで、災害廃棄物の処理推進に関する内容も盛り込まれています。こちらは主に自治体に関わる内容ですが、地域社会全体にとって重要な改正です。
平時からの備えの義務化
令和6年の能登半島地震などの教訓を踏まえ、市町村における災害廃棄物処理計画の策定が推進されます。また、地方公共団体と民間事業者の間で事前に協定を締結することや、非常災害廃棄物の埋立処分に係る最終処分場をあらかじめ確保しておくための指定制度が導入されます。災害時の処理においては再々委託(下請けの下請け)も一定の条件で認められる方向です。
JESCOの事業範囲拡大
地方公共団体に対する安定的な支援体制を構築するため、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)の事業範囲に、非常災害廃棄物に関する事業が追加されます。これにより、大規模災害発生時に国の支援機関として迅速に対応できる体制が整えられます。
この災害廃棄物関連の規定は、公布から3ヶ月以内という短期間で施行される予定であり、緊急性の高さがうかがえます。
事業者が今から準備すべきこと
許可制の施行までには公布から2年6ヶ月の猶予がありますが、設備の改修や体制整備には時間がかかります。「まだ先の話」と考えず、今から計画的に準備を進めることが事業継続の鍵となります。
施行までのスケジュールを把握する
改正法案が今国会で成立した場合、公布は2026年度中、スクラップヤード規制の施行は2028年後半〜2029年前半と見込まれます。ただし、既に条例で規制が始まっている自治体では、条例と法律の二重規制や移行措置が発生する可能性もあるため、事業所所在地の自治体の動向にも注意が必要です。
国会審議の進捗や政省令の制定スケジュールを継続的にチェックし、許可申請の開始時期が発表され次第、速やかに対応できるよう準備しておきましょう。
自社の事業が許可対象になるか確認する
改正案の規制対象は「使用済みの金属・プラスチック物品の保管又は再生を行う事業」です。自社が取り扱っている品目や事業の内容が許可対象に該当するかどうかを、今のうちに確認しておく必要があります。
特に、金属スクラップの保管のみを行う事業者(再生処理は他社に委託している場合)も規制対象に含まれる可能性が高いため、「保管だけだから関係ない」とは考えず、慎重に確認しましょう。
許可基準を満たすための設備・体制整備
許可取得に向けて最も時間がかかるのが、設備・体制の整備です。先行する千葉県条例の基準を参考にすると、以下のような対応が想定されます。
保管高さ制限への対応として、現在のスクラップの積み上げ状況を確認し、基準を超えている場合は保管方法の見直しが必要です。火災防止対策として、消火器・散水設備の設置、バッテリー等の発火リスクのある品目の分別保管体制の構築が求められます。汚水防止対策として、敷地内の排水経路の確認、油水分離槽の設置などが想定されます。搬入・搬出記録の管理体制として、品目・数量・搬入元・搬出先を記録する帳簿管理の仕組みを整えておく必要があります。
これらの対応には設備投資やオペレーションの変更が伴うため、早い段階で必要な対策の洗い出しを行い、計画的に進めていくことが重要です。
行政書士に相談するメリット
新たに導入される許可制への対応は、行政手続きに不慣れな事業者にとって大きな負担になります。行政書士は、許可申請に必要な書類の作成や行政機関との事前相談を代行できる専門家であり、事業者の負担を大幅に軽減できます。
許可申請手続きの代行と事前相談
行政書士は、許可申請書の作成、添付書類の収集・整理、行政機関への提出代行、事前相談への同行など、許可取得に向けた手続きを一貫してサポートできます。産業廃棄物処理業の許可申請で培ったノウハウは、今回のスクラップヤード許可制にも応用が可能であり、スムーズな許可取得のためには専門家の知見が大きな力になります。
特に、申請前の事前相談の段階から行政書士が関与することで、許可基準の解釈や必要な設備対応について正確な情報を得ることができ、手戻りのリスクを最小限に抑えられます。
費用の目安と依頼の流れ
スクラップヤードの許可申請は新制度であるため、費用の相場はまだ確立されていません。しかし、類似の産業廃棄物処理業の許可申請では、行政書士への報酬として15万〜40万円程度が一般的です(事業の規模や申請内容により異なります)。
まずは無料相談を利用して、自社の事業が規制対象に該当するかの確認と、許可取得に向けたスケジュール感の把握から始めることをお勧めします。
まとめ
2026年4月10日に閣議決定された廃棄物処理法改正案により、スクラップヤード事業に全国一律の許可制が導入されることになります。これまで法規制の空白地帯にあったスクラップの保管・再生事業に対して、都道府県知事等の許可、環境省基準の遵守、輸出規制の強化、立入検査・罰則といった包括的な規制が設けられます。
施行までには2年6ヶ月の猶予がありますが、設備の改修や管理体制の整備には相応の時間と費用がかかります。とりわけ、これまで条例の規制がなかった地域で事業を行ってきた事業者にとっては、許可取得に向けた準備を早期に始めることが事業継続のために不可欠です。
スクラップヤードの許可申請や法改正への対応でお困りの際は、ai行政書士法人までお気軽にご相談ください。行政手続きの専門家が、許可取得に向けた準備から申請手続きまでしっかりサポートいたします。

